京町家宿泊施設について
京都市内では町家の宿泊施設が多数あり、国内のみならず海外の旅行客に人気となっています。
通常のホテルと違い、京町家に宿泊する事でよりディープな体験ができることや、京町家特有の風情ある外観や内装に癒されるといった点が人気の理由だと思われます。
私は不動産の売買に関わる仕事をしておりますが、平成20年頃からこういった町家の宿泊施設を創り、新たな投資物件として投資家に販売をしておりました。
今回はこういった経験を踏まえ、京町家の宿泊施設の魅力を販売物件という視点でご紹介していきたいと思います。
京町家の宿泊施設とは?
京町家の宿泊施設とは、京町家を改修し旅館の営業許可を取得した宿泊施設の事をいいます。
京町家は昭和25年の建築基準法施行前より建っていた木造住宅の事を指してます。
2023年時点で見ますと建築年数は78年以上ということになります。
京町家の特徴である、例えば外観では格子戸や虫籠窓、内装では大黒柱や昔ながらの梁・火袋等を残し、その上でお客様に快適にお過ごしいただけるように改修を施す事により、どこか懐かしい風情を残しつつもより深い意味での京都体験ができるという建物です。
京町家を宿泊施設として改修するにあたり、建物の延床面積が100㎡未満の物件をターゲットとし、旅館営業許可の中でも簡易宿泊施設というカテゴリーでの許可を取得しております。
基本的には宿泊者は1棟1グループで2~5名程度の定員で宿泊していただきます。
宿泊は基本素泊まりで食事等に関しては近隣のお店にお立ち寄りいただくことで京都を楽しんでいただくという形式をとってます。
お客様は現地に来られた際、運営会社のスタッフがお待ちしておりますのでそこで宿帳への記載を頂いております。(運営会社によっては会社で頂く場合もあります)
施設からの出入りは当然ながり自由です。玄関の鍵は電子錠となっており、暗証番号を入力することで出入りが可能となります。
一般的なホテルと違い、時間の制約がありませんのでより自由度の高い旅行を満喫できる事が京町家の宿泊施設の魅力ではないでしょうか?
販売物件としての京町家宿泊施設
販売物件としての京町家宿泊施設を購入するのは投資家もしくはご自身で運営を行う方となりますが、当然ながら両者とも事業目的となります。
ご自身で運営する場合は別として、投資家が購入する場合は①宿泊施設の営業許可の取得と②運営会社との契約が大前提となります。
一般的な不動産売買と違い、運営側との業務委託契約を締結する必要があります。
関係性を確認すると以下のようになります。
*A(売主)・B(買主)・C(運営会社)・D(改修工事会社)とします。
1:A↔B 売買契約 2:A↔C 業務委託契約 3:A↔D 工事請負契約
販売物件としてBに購入いただく為には、1・2・3の全てを準備する必要があります。
投資家が物件を購入する指標として、利回りがあります。(収益還元法)
利回りとは、その物件を購入(資金投下)する事で年間どれぐらいの収益を生むかを計算したものになります。
利回りには表面利回りと実質利回りがあり、表面利回りとは単純に年間の収益(=売上)で実質利回りは年間の収益ー経費での計算となります。
京都市内で実質利回りがおおよそ5%あたりが購入のラインであると考えられています。
例)取得金額5000万円 年間収益500万円 経費200万円 として
表面利回り=500万円÷5000万円=10%
実質利回り=(500万円ー200万円)÷5000万円=6%
その為、投資家に京町家宿泊施設を紹介する場合、実質利回りを算出する為に不動産を保有する事でかかる固定資産税等とは別で運営会社に支払う運営費用と想定表(年間にどれぐらいの売り上げが見込めるか)を作成し説明する必要があります。
あくまで想定となる為、売上の保証をするものでは無い事を十分にご理解いただかなければなりません。
また、運営費用は運営会社によってかなり前後しますので運営会社の選定も慎重に行う必要があります。
京町家宿泊施設を購入することのメリット
京町家宿泊施設を購入することのメリットでまず大きい点は税金面です。
■固定資産税:土地の評価額は景気によって左右されますが、建物は構造と建築年数でほとんどが決まります。京町家の場合は築後最低でも78年経過しておりますのでその評価額はかなり低いものとなっています。改修することで将来的に評価替えされて上る可能性はありますが、新築並みには課税されていないので実情です。
■減価償却:建物に対して多額の改修費用が必要となりますが、それは減価償却の対象となります。一般的な木造住宅の場合、新築ですと22年で償却しなければなりません。一方築後相当年数経過している場合、それよりも短期での償却が可能です。*税務署の見解によりますので必ず可能であるとは言い切れませんが、4年で償却したというケースもあります。売上がかなり上がる施設の場合、短く償却することで経費計上を大きくすることで節税の効果が見込めます。
■損益通算:京町家宿泊施設の所得税は一般サラリーマンの所得税と損益通算できます。その為、減価償却によりその施設で引ききれなかった税金をサラリーの所得税から引く事ができます。
■相続税の小規模宅地等の特例:この特例は事業を行っていた土地を相続した場合、その評価額の最大80%を引くことができるという特例です。実際に相続税対策の目的として購入いただいたお客様もいらっしゃいました。
2点目としては収益性です。
京都は観光都市であり、ここ数年はコロナの影響で客足がありませんでしたが今年に入ってからまた増加傾向にあります。
私のお客様で京町家宿泊施設の所有者の方は今までで最高収益が出ているとおっしゃってました。
宿泊料金が以前より高くても予約が埋まっている状況です。
そういった意味でも居住用賃貸の場合と比べ、高い収益性が期待できます。
3点目としてはリセールバリューが期待できるところです
京町家宿泊施設を購入するお客様は投資家が多い為、京都だけでなく日本各地や世界からも購入希望者が来ています。
利回りが大きな判断材料となりますが、順調に収益があがっていれば通常の物件よりも高く売れる可能性があります。
町家宿泊施設を売却する時の注意点
京町家宿泊施設を売却するにあたり、何点か注意点があります。
①営業許可が取得可能か?
営業許可はその物件に対して取得するものです。京町家宿泊施設の営業許可の基準は以前と比べハードルが高くなってきています。現在運営されていたとしても現行基準に照らし合わせると許可が下りない場合があります。売却する場合は当然ながら所有者が変更となりますので、現在の営業を廃業したうえで新たに許可を取得する必要があります。特に再建築不可の物件は以前は大丈夫でしたが現在は下りない可能性が高いです。
②運営会社をどうするか?
運営会社をそのまま同じ会社で引き継ぎできる場合は良いですが、できない場合購入者は新たに運営会社を探す必要があります。また、運営会社の条件も新所有者に変わった場合に変更となる場合がありますので、事前に打ち合わせをしておく必要があります。
③営業の引継ぎや売り上げの分け方
許可名義人が変更となる場合、実際には現在の許可を継続したまま新たに営業許可を取得しその後に廃業という流れになります。宿泊施設の運営は継続したままなので、宿泊者が予約していきます。そのため、前オーナーと現オーナーとの間でどの時点までの売り上げを全オーナーの収益とするか?ということを事前に決めておく必要があります。
最後に
今回は京町家宿泊施設を販売物件という視点で解説しました。
通常の売買と違い、高い知識と経験が必要となる取引です。
こういった物件の売却に関してはより詳しい不動産会社にご相談されることをお勧めいたします。
また、現在宿泊施設を運営していない普通の空家であっても、エリアや物件の大きさ等の諸条件によってはこういった投資家をターゲットに価格設定する事が可能ですので、もし京都市内で空家をご所有の方がいらっしゃいましたらお気軽にご相談ください。
株式会社光徳
住所:京都府京都市中京区聚楽廻東町5番地
電話番号:075-200-3893
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